自伐(型)林家における指導者を養成する講座が8日間開催されています
くまもと林業大学校では、熊本の森林を自ら守り育てる自伐(型)林家を対象に、地域のリーダー(指導者)を育成するため、「森づくり活動塾(指導者養成講座)」を実施しています。全8日間で開催される【短期課程】の同塾では、「Woodsman Workshop LLC」の水野雅夫氏を講師に招き、安全に関する基礎知識や指導者としての心構え、受け口・追い口による伐倒の解説・指導方法、かかり木ワークショップ(最適解を見出すシミュレーション)などを、座学と実習で学びます。
令和2年11月14日(土曜日)、全日程の3日目となるこの日は、熊本市中央区の県林業研究・研修センターに集合。午前中は、同センター研修棟で、前回の講習で出されていた課題へ答えるプレゼンテーションがありました。4名の受講者はそれぞれ、水野氏が執筆した「森林技術」の連載から心に残った記事を選び、自分の状況と重ね合わせながら、「自分が新人だった時を思い出しながら教える」「教える相手の状況を想像する」など、指導方法について発表。発表後は、相互に意見を出し合いました。
また水野氏は、「人に説明するための言語化」や「話の構成、強弱の付け方」の大切さ、教育用の「トレーニングメニューを作る」など実践的な指導方法や、自身の経験談を交えた指導の際の心構えなどを話されました。
午後は、同市北区の万石試験林に移動。「教えられ役」として参加した2名に、「指導役」の受講生がチェーンソーの扱いや伐倒方法を教える実習を行いました。「指導役」の受講者が自ら伐採を行い、水野氏が水平器や差し金を使って正確に切られているかを測定したり、他の受講者から伐採姿勢のクセを指摘してもらったりしました。続いて受講者は、教えられ役の2名に指導を行い、皆で良かった点・改善点を出し合います。教えられ役の伐採姿勢をさまざまな角度から観察する中で、自分の感覚を言葉で相手に伝える難しさを実感していました。
受講者の緒方さん(阿蘇市)は、「教える人の弱点を探し出すのが難しかった。自分ではしっかり見ているつもりだったが、他の人から指摘され、きちんと見えていないことに気付いた」と、相手を観察することに目を向けます。また、「自分の思いをどう伝え、理解してもらうか」も課題と感じました。今回得た技術や情報を一つでも地域に持ち帰り、生かしたい考えです。
同じく受講者の田中さん(山鹿市)は、「普段は現場作業や後輩への指示などで手一杯で、自分が学ぶ時間や機会が持ちづらい。この講習では、座学と実習でしっかり教えてくれるので非常に良い体験」と手応えを感じています。「これからの林業では、従来は『感覚』で教えていたことを、しっかり理論立てて説明することが求められている」と話します。
講師を務めた水野氏は、指導のポイントを「具体的にどう相手に動いてもらうか」と話します。その上で「感覚的な言葉を具体的なことに言い換えて伝えたり、相手の全体を見て、どこが弱点であるかを整理して一つずつ伝える」ことが重要と強調します。
教えられ役の林さん(玉名郡和水町)は、「基礎的なことをしっかり対面で教えてくれ、分からないことも聞けて良かった」と笑顔。
受講者それぞれが、自分の課題に向き合い、技術力と指導力の向上を図った今回の「森づくり活動塾」。この学びを、受講者が県内各地で伝え、熊本の林業がより一層盛り上がることを期待します。