9月30日 【短期課程】女性担い手研修を開催しました!

「ドローン操作」「経営がわかる決算書の読み方について」の研修を実施

 

くまもと林業大学校では、県内の林業を支える女性担い手に向けた【短期課程】女性担い手研修を開催しています。

今年度は、9月30日(木曜日)に熊本県林業研究・研修センターで、午前「ドローン操作研修」、午後「経営がわかる決算書の読み方について」の研修を開催しました。研修会は、県内各地の女性担い手13名が参加したため、女性担い手同士の交流も深めることができました。

ドローン操作研修

午前の部で行われた「ドローン操作研修」では、阿蘇森林組合の楢木野真也課長、島川英輔さん、江藤将太さんを講師に迎え、コンテナ苗木や植栽器具の説明、特定母樹と早生樹の実証試験の報告、運搬用ドローンの性能や導入コスト、資材運搬の実例紹介、ドローン関連法令などを解説してもらいました。その後、参加者らは屋外に移動して実際にドローン操作を体験。参加者は2人1組になって丸太や資材運搬バッグを取り付けたドローンを飛行させたり、目的地点での離着陸をしたりしました。また、調査などに用いる小型ドローンの操作体験も行いました。体験後の質疑応答では、運用面での経費や利用状況について参加者から質問が寄せられ、講師陣が具体例などを交えて答え、午前の部を終了しました。

 

有限会社秋吉林業
秋吉朋美さん

資材運搬用ドローンの操作を体験をした有限会社秋吉林業の秋吉朋美さんは、ドローン導入にかかるコストや運用についての情報収集を目的に研修に参加。自社が請け負う国有林などでは、伐木から植林、防護柵の設置まで一貫した事業が増加しており、コンテナ苗木の普及で、以前は植林をしなかった夏季も植林をするようになったそう。そのため、「従業員の体力・労力軽減や安全面を考慮し、ここ1年ほど資材運搬用ドローンの導入を検討しています」。操作性は現在運用する小型撮影用ドローンとあまり変わらず、「難しさは特に感じなかった」と秋吉さん。ただ、200万円を超える機体費用だけでなく、「発電・充電機やバッテリーの費用、持続性、充電時間などの運用コストもネック」と慎重です。研修を通じて運用状況や周辺機器などのコストを確認し、今後導入するかを検討していくそうです。

秋吉朋美さん

 

ドローン研修で講師を務めた阿蘇森林組合の楢木野真也課長は、「今回の研修は、まずドローンを知って、慣れてもらう」ことが目的と話します。県内で資材運搬用ドローンを導入している事業体はほとんどなく、ドローンを使う現場や運用の仕方など、従来の方法に比べてどれぐらい効率的になるかも、まだ模索中とのこと。体験した参加者も、資材運搬用ドローンが労力軽減につながることには納得しつつも、「費用面から実際の導入は難しい」との見方が大半です。今回のような研修会などを通じて、林業従事者と意見交換しながら運用方法を深めるとともに、県と協力して省力化やスマート林業を推進していく考えです。より体力を要する下刈り作業などでも、省力化を図る機器や方法を模索しており、さまざまな場面でスマート林業が普及することで、「女性担い手が増えたり、担い手不足の解決につながったりするのでは」と期待します。

ドローン操作研修で講師を務めた阿蘇森林組合・楢木野真也課長

 


経営がわかる決算書の読み方について

午後からは、熊本学園大学商学部・池上恭子教授が「経営がわかる決算書の読み方について」と題して講義。決算書の全体像や枠組み、項目のつながりなどを摑んで決算書の仕組みを知り、「決算書に慣れる・読む」ことに主眼を置いた内容で、始めに経営における会計の重要性や流れなどを説明。財務3表と呼ばれる「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」の目的やそこから分かることを、具体的な事例を用いながら解説しました。講義の最後には、池上教授から総利益率や営業利益率が記されたリストを基にしたクイズが出題され、真剣に考える研修生の姿が印象的でした。終了後には、決算書を持参した研修生が池上教授に個別の質問をする場面も見られました。

 

有限会社岩下建設
岩下孝子さん

午前・午後を通して参加した有限会社岩下建設の岩下孝子さんは、自社では主に素材生産をしており、林業に関する知識を深めるために今回の研修に参加しました。決算書作成は以前から行っていて、損益計算書の見方もある程度分かっていましたが、「貸借対照表の見方がよく分からなかったので、講義を聞いて今までよりも見方が深まりました」と話し、研修での学びを今後の仕事に生かしたい考えです。また、自社の決算書を持参し、分からない部分を専門家に直接聞けたことも研修の成果と感じています。同時に、森林組合で働く女性や他の事業体の女性林業者たちとの交流が図れ、「とても楽しかった」と満足そうです。

岩下孝子さん

 

「経営がわかる決算書の読み方について」で講師を務めた熊本学園大学商学部・池上恭子教授は、「決算書などに苦手意識を抱いている人も多く、まずはそれを払拭してもらいたい」と講義の狙いを話します。講義の中では、決算書を個別の数字として捉えるのではなく、項目ごとのフレームで捉えることで決算書が分かりやすくなると解説。「女性担い手の皆さんはとても熱心で、自分が分からない点が明確な人も多かった」と研修生の熱量を感じていました。また、多くの事業体で税理士を付けているので、「(税理士の)説明を理解し、質問ができるようになれば」と、今回の学びを今後に生かしてくれることも期待しています。池上教授自身も、今回の研修を通じて林業にもさまざまな業務があることや独特の売上計上の仕方など、「学んだ点も多かった」そうです。

講師を務めた熊本学園大学商学部・池上恭子教授