10月3日~5日 【長期課程】~架線の設置・運転実習~

車両系集材機械が入れない山中で伐り出された木材を集める「架線集材」

「架線集材」は、ワイヤーロープを山に張り巡らせて集材する方法で、高性能林業機械が入れないような急峻な場所でも材木を運び出せるため、そのような現場の多い人吉・球磨地域では多く使用されています。高性能林業機械で作業を行うには作業道の作設が必要であり、豪雨による土砂崩れの発生等の課題もあるため、そのリスクの少ない架線集材が再び注目を集めています。
10/3~10/5の3日間で県北校・県南校の生徒を対象に「架線集材」の基礎的な知識習得のための「架線の設置・運転実習」を実施しました。
初日は座学で、架線集材の仕組みや架線の構造、設置や操作方法といった基礎的な知識の講習があり、2日目は九州横井林業(株)の施業現場で、架線設備の見学、集材機の操作体験を行いました。3日目は、実際に架線を使って伐倒木の集材作業を体験。今回の実習では、普段は交流の少ない県北校・県南校の生徒同士の親睦を深める場にもなりました。

実習2日目では、宮崎県西米良村の施業現場で集材機の運転実習を行いました。現場ではまず、講師を務める九州横井林業(株)・河本浩孝さんから、機械周辺で行動する際の注意点やワイヤーを巻き上げる集材機についての説明があり、続いて生徒たちが山の斜面に等間隔で並んでワイヤーを山の頂上から麓に張る作業を実施。その後、河本さんによる各ワイヤーの説明や集材機の操作方法のレクチャーのほか、材木を吊るす作業員との無線応答のやり方や架線集材のデモンストレーションが披露され、生徒が一人ずつ集材機の操作を体験しました。午後からは、ワイヤーに取り付けられた集材搬器に木材を取り付け、生徒同士が交代しながら架線集材を行いました。

 

実習に参加した県北校の門田悟さん(34)は、架線実習でワイヤーを張り巡らせて集材する仕組みを目の当たりにして感動を覚えると同時に、複雑なワイヤーの通し方が「いまだに理解できていない」と苦笑。さまざまな集材方法があることを知り、林業の奥深さを実感しました。また、ワイヤーの張り方や滑車の吊り上げ方法などを覚えれば、他の現場やクレーン作業などにも幅広く応用が利くので、「学んだことが、将来、自伐林家になった時に生かせる」と感じています。門田さんには、「楽器に使われる木材を集めた森をつくりたい」という夢があり、それに向かって日々、林業大学校で学んでいます。

県北校の門田悟さん(34)

 

県南校に在籍する東征岐さん(19)は、父方と母方のおじが林業従事者で、県立南稜高校入学後に林業に興味を抱き、くまもと林業大学校に進学。「自然の中で仕事をすることや、木を伐倒した時の達成感が魅力」と話します。今回の実習では、1日目の座学で操作方法を聞いた時には「理解できた」と感じ、2日目の現場見学では、「簡単そうにやっている」という印象を受けました。しかし、いざ自分で集材機を操作すると想像以上に難しく、「操作レバーを素早く動かしたり、止めたり、速さを調整したりするのが思うようにいかなかった」と振り返ります。将来は、若手の林業従事者が集まって「熊本や日本の林業を盛り上げたい」との夢を抱いています。自分が現場に入った時に困らないよう「実習でしっかり学んで自信をつけたい」と前向きです。

県南校の東征岐さん(19)

 

講師を務めた九州横井林業(株)の河本浩孝さんは、「今では高機能林業機械での集材が一般的ですが、人吉・球磨のような急峻な地域や大きな岩がある場所、民家の近くなどは大型車両が入れない」と話します。架線集材でなければ作業できない現場が少なくありません。また、作業場所によって最適な架線の張り方が異なり、同じ張り方が通用しないため、「経験を重ねることが必要」と強調。今回の実習では、生徒たちに架線の必要性を感じてもらい、「集材にもさまざまな方法があることを学んでもらえたら」と話します。現在の林業は、多くの現場で機械化が進み安全性や人手不足といった課題も改善されており、「女性にも入ってきてもらいたい」と女性の参入にも期待を寄せます。

講師・河本浩孝さん
(九州横井林業(株))