伐倒の基礎技術を学ぶ「森づくり活動塾」を開催しました!

安全作業のための心得や基礎知識を伝え、伐倒作業に必要な手順を学ぶ

 くまもと林業大学校では、森林所有者、農家林家、UIJターン者、自伐型林業者等を対象に、基本的な安全知識やチェーンソーの操作などを学ぶ【短期課程(自伐林家)】森づくり活動塾を開催しています。令和3年度の同研修は、11月27日(土曜日)から4日間の日程で熊本県林業研究・研修センターで実施。

 講師には、県内の林業研究グループに所属する伐倒のプロ5人があたり、初日は座学で、安全に作業を行うための心得や伐倒のメカニズム、チェーンソーの基礎知識を学び、2日目はチェーンソーの刃を研ぐコツやその際の姿勢などについて、実習を交えた講義が行われました。受講者を2グループに分け、別日程で行われた3・4日目は、前2回の座学と実習で学んだことを踏まえ、チェーンソーの操作方法や伐倒作業に必要な手順を学び、実際に木を切りながら反復練習。研修を通じて、受講者同士の交流も図られました。

 


 12月12日(日曜日)に実施した研修最後のカリキュラム「伐倒のための基礎練習」には、県内各地で自伐林家を目指す10人が参加。5人ずつのグループに分かれて、受け口、追い口の作り方を学びました。

 受講者は、自分のチェーンソーの刃が水平に入っているかや、切り口が真っ直ぐになっているか、狙った深さまで切れているかを小まめに計測。チョークで目印を入れるなどしながら伐倒の練習を行いました。切り終わると、講師が水平器や差し金を使って受け口や追い口を計測し、正確に切れているかを確認しながら、受講者にアドバイス。また、チェーンソーの持ち方やきちんとブレーキを掛けているかなどをチェックし、安全操作の大切さを伝えました。

 研修の最後には各グループから代表者が選ばれ、全受講者・講師が見守る中、どちらがより安全に、そして正確に受け口・追い口を作れるかを競い、受講の成果を披露。伐倒後は切り込みの正確さや作業上の安全性などを採点し、得点により勝敗を決めました。

 

 天草市本渡で、植林用のスギやセンダンなどの苗木生産をしているHさんは、今回の研修に参加することで「チェーンソー及び刈払い機特別教育」の受講費の助成があることに加え、安全防護衣の支給があることを知り、「昨年から参加したいと思っていました」と、参加を心待ちにしていました。これまでチェーンソーの操作経験がなく、「一見簡単そうだが実際にやってみたら難しかった」と話します。また、チェーンソー操作や伐木には危険が伴うため、「安全第一で行うことが重要なのはもちろん、基礎・基本が大切だと感じました」。さらに、研修を通じて各地から集まった受講者や講師と知り合えたことも、「今後の仕事に活かせる」と、収穫を実感していました。

受講者 原田幸太さん
受講者 Hさん

 

 5年前に東京都から山鹿市に移住し、自伐林家を目指しているKさん。今回の研修は、「全てが勉強になりました」と満足気。特に、研修で学んだチェーンソーの刃の研ぎ方を自分のチェーンソーに試したところ、「切れ味が全然違った」と、研修の成果を実感しています。また、チェーンソーの使い方や伐倒の仕方についても、「正しいやり方だけでなく、ダメなやり方や起こり得る事故なども教えてくれるのが良かった」。これまでは、林業従事者は「職人気質で気難しいと思っていた」というKさんですが、講師陣がとても分かりやすく説明してくれたことで、「イメージが変わりました」と話します。今後は、家で使用する薪を作る時や、地域の荒れた竹林の整備などの際に、研修で学んだ技術を活かす考えです。

受講者 金原信裕さん
受講者 Kさん

 

 今回講師を務めた山鹿林業研究会の田中翔さん。林業への興味や熱い想いを持って集まった参加者に、「林業という仕事に注目してくれたことがうれしい」と笑顔。初心者の事故で多いチェーンソーのブレーキのかけ忘れや伐倒の基礎を伝えることで、「林業の危険性や安全な作業の大切さを体感できたのでは」と話します。また、県内各地から集まった参加者が、それぞれの地域で自伐型林業に取り組み、林業会社などでは手が回らない小さな竹林や手入れが必要な人工林などを整備して、「将来的に各地域の森を守るリーダーになってもらえれば」と期待を寄せます。

講師を務めた田中翔さん(山鹿林業研究会)
講師を務めた田中翔さん(山鹿林業研究会)

 

 同じく講師を務めた旭志林業研究グループの木村和博さんは、自身が初心者の時に感じていた、受け口と追い口の会合線を直線にすることや、チェーンソーで水平に真っ直ぐ切ることの難しさを重点的に伝えました。同時に、木を切る体勢やチェーンソーの持ち方、指の置き方なども重視。「初心者には、今回習った基本を大切にし、安全第一で作業してもらいたい」と話します。また、チェーンソー操作は、数をこなして慣れることが必要なので、「楽しく作業を続けながら頑張ってほしい」とエールを送ります。加えて、講師を務めたことで「人に教えることの難しさ」も痛感。「私自身も参加者と一緒に学ぶことができた」と、得るものがあったようです。

講師を務めた木村和博さん(旭志林業研究グループ)
講師を務めた木村和博さん(旭志林業研究グループ)

 

 講師の一人、くまもとLogging Clubの緒方洋一さん(写真右)は、伐木の際に巻き尺や水平器などを使うことや木に目印などを書き込むことを勧めます。「目測に頼らず、使える道具を有効活用してほしい」と、基本に沿った正確な作業の重要性を強調。同じく講師で、熊本県林業研究グループ連絡協議会の会長も務める國武智仁さん(写真左)は、「研修を通じて作業の際の自分のクセが分かったのでは」と振り返ります。さらに、「木が痛くないように、木を横に寝かせるような気持ちで作業にあたってほしい」とも。林業従事者の減少など、林業の置かれた厳しい現状に対しては、「子どもが憧れる職業にしたい」と熱く語ります。

講師を務めた緒方洋一さん(くまもとLogging Club・写真右)と國武智仁さん(御船林業研究グループ)
講師を務めた緒方洋一さん(くまもとLogging Club・写真右)と國武智仁さん(御船林業研究グループ・写真左)